はじめに
健康診断の目的は病気の予防と早期発見です。
血液検査や血圧測定など数値によって判断する検査は主に生活習慣病の予防・早期発見、X線検査や超音波検査のような画像による検査は主にがんの早期発見につながります。
数値は予防的観点から基準範囲を設定して判定を行います。今後の健康管理の目安として活用しましょう。
画像検査で異常の判定があった場合は早期発見・早期治療のために、専門医の診断を受けることが大切です。
判定区分について
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1異常なし検査の範囲では異常を認めません。
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2軽度異常軽度の異常ですので、次回の健康診断まで様子を見てください。
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3要再検査・生活改善異常が認められます。自覚症状がなくとも
一定期間後に再検査を受けてください。 -
4要精密検査精密検査が必要です。
医療機関を受診してください。 -
5要治療治療が必要です。
医療機関を受診してください。 -
6治療中(要治療継続)主治医のもとで治療や経過観察を続けてください。
検査項目について
身体計測
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身長
体重
BMI(肥満度)身長と体重の数値から、肥満度を表すBMIを算出します。
BMI=体重÷身長÷身長
~18.4 やせ
18.5~24.9 標準
25.0~ 肥満 -
体脂肪率体重に対して脂肪がどれくらいあるかを示したもので、
「%」で表します。 -
腹囲内臓脂肪を反映すると言われています。
男性85cm以上、女性90cm以上に該当する場合、
内臓脂肪が100㎠以上あることが推測されます。
眼科検査
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眼圧眼球の中は、房水という液体によって圧力が保たれており、これを眼圧といいます。眼圧が高い場合は、緑内障などの疾患が疑われます。
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眼底眼球の中の血管や網膜の状態を調べます。糖尿病による網膜病変や正常眼圧緑内障などの眼科疾患を発見するための参考になります。
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視力見えにくさの程度を調べます。0.6以下では少し離れたものが見えにくくなると言われています。近視・乱視・遠視の判別や視力が低下する疾患がないかなど眼科で追加検査が必要な場合があります。
聴力
低い音(1000Hz)と高い音(4000Hz)の2種類の音が聞こえるかを調べます。単位はdB(デシベル:音の大きさ)で示し、数値が大きいほど聞こえにくいことになります。1000Hzは日常会話の音域と言われています。4000Hzのみが聞こえにくい場合は騒音性難聴の可能性があります。
血圧
血管内にかかる圧力のことです。心臓が収縮し、血液を押し出すときの圧力を収縮期血圧(最高血圧)、心臓が拡張し、血液を取り込むときの圧力を拡張期血圧(最低血圧)といいます。血圧が高い状態が続くと、脳・心臓血管疾患のリスクが高まります。
心電図
心臓に流れる電気の伝導を調べ、心臓疾患の発見の参考にします。不整脈や心筋梗塞、狭心症などの診断に役立ちます。
呼吸機能検査(スパイロメトリー)
空気を吸い込む力や吐き出す力を測定し、肺の機能を調べます。
一秒間の呼気の勢いを示す一秒率の低下は喫煙の影響やCOPD(慢性閉そく性肺疾患)などの発見の参考になります。%肺活量は肺の膨らみの程度を表し、年齢・性別・身長から割り出した予測肺活量に比べて実際の肺活量が何%かで判断します。低下している場合は肺線維症などの拘束性換気障害の発見の参考になります。
放射線画像検査
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胸部X線肺がんや結核などの肺の疾患の発見、心臓や動脈などの循環器疾患の発見を目的とします。異常所見を指摘された場合は診断のためCTなどの精密検査が必要です。
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上部消化管X線
(バリウム)白い液体状のバリウムを飲み、レントゲンを撮影し、食道、胃、十二指腸の形態を観察します。胃がんや胃炎、ポリープなどの発見を目的とします。異常所見を指摘された場合は診断のために上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)が必要です。
腹部超音波検査(腹部エコー)
超音波の反射によって腹腔内臓器(主に肝臓、胆のう、腎臓、膵臓、脾臓、腹部大動脈など)を観察し、腫瘍や結石などの発見の参考にします。異常所見を指摘された場合は診断のために専門医を受診することが必要です。
便潜血検査
2日分の便に血液の混入がないかを調べます。肉眼ではわからない微量の血液の検出が可能で、主に大腸の疾患(大腸がんやポリープ)の発見の参考になります。陽性の場合、診断のために大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が必要です。
尿検査
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尿蛋白陽性の場合、腎疾患の可能性があります。
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尿糖糖尿病で陽性となることがありますが、その場合は血液検査での確認が必要です。内服薬の影響で陽性となることがあります。
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尿潜血尿に血液が混入している可能性があります。腎臓や尿管、膀胱の疾患の発見の参考になります。
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尿沈渣尿中の細菌や血液成分、尿成分の結晶の混入の程度を調べます。
腎臓や膀胱の疾患の発見の参考になります。
血液検査
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血液一般白血球数:多い場合は炎症や細菌感染の可能性があります。
赤血球数、血色素(ヘモグロビン)、ヘマトクリット:少ない場合は貧血の可能性があります。
血小板:少ない場合は出血が止まらなくなる可能性がありますので精密検査が必要です。 -
肝機能総蛋白(TP):低い場合は肝硬変や低栄養、高い場合は自己免疫性肝炎や多発性骨髄腫などの疾患の可能性が疑われます。
アルブミン(ALB):低い場合は肝硬変やネフローゼなどの腎疾患を疑います。
GOT(AST)、GPT(ALT)、γGTP、ALP:主に肝臓および肝臓周辺の細胞に含まれる酵素で、肝機能障害の程度を示します。
総ビリルビン(T-Bil):血色素(ヘモグロビン)が肝臓で分解された物質で、高い場合は皮膚の黄染(黄疸)や、肝臓・胆のう・胆管周辺の疾患の可能性が疑われます。 -
腎機能尿素窒素、クレアチニン:筋肉などの蛋白質の代謝産物で、高い場合は腎臓から排泄しきれていないことを示し、腎機能障害の可能性があります。
eGFR(推算糸球体濾過量):腎臓からの老廃物の排泄力を反映します。血清クレアチニンと年齢、性別から計算され、値が低い場合、腎機能が低下している可能性があります。 -
脂質代謝総コレステロール:血液中のすべてのコレステロールの総量です。
LDLコレステロール:悪玉コレステロールの一つで、高い場合は動脈硬化の原因の一つとされています。低すぎても病気が隠れている場合があります。
HDLコレステロール:善玉コレステロールと言われ、悪玉コレステロールを血管内から排泄することを助ける働きがあります。低すぎる場合に異常とされますが、高すぎても病気が隠れている場合があります。
Non-HDLコレステロール:総コレステロール値からHDLコレステロール(善玉コレステロール)値を除いたもの、つまり悪玉コレステロールの合計です。高い場合は動脈硬化によって引き起こされる疾患のリスクが高まるとされています。
中性脂肪(トリグリセライド):高い場合、動脈硬化が促進されたり、脂肪で血管が詰まったり、膵炎を起こすなどのリスクが高まります。 -
糖代謝空腹時血糖:高い場合は糖を代謝する力が低下している可能性があります。高血糖が持続していれば糖尿病の可能性が高まります。
ヘモグロビンA1c(HbA1c):血中のヘモグロビンという物質と糖が結合している割合(%)です。1か月以上の期間の血糖の状態を反映すると言われており、高い場合は糖尿病の可能性があります。 -
膵機能アミラーゼ:膵臓や唾液腺から分泌される消化酵素です。異常が見られた場合は原因が膵臓なのか唾液腺なのかを判断するため再検査または精密検査が必要です。
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尿酸血液中のプリン体という物質が分解された後の老廃物です。結晶化すると痛風や腎臓・尿管結石の原因となります。高い状態が続くと腎機能障害や脳、心臓疾患のリスクが高まります。
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CRP
(炎症反応)炎症や細胞に障害が起きると血清という血液の成分中に増加する蛋白質です。数値が上昇することで炎症の程度がわかります。
その他:血清免疫検査
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RF
(リウマトイド因子)人間の体を外敵から守る免疫グロブリンに対して戦ってしまう抗体(自己抗体)という蛋白質です。関節リウマチなどの自己免疫疾患の有無の参考になります。 -
梅毒反応RPR:梅毒に感染してできる脂質に対する抗体を測定する方法
TPHA(TP抗体測定検査):梅毒そのものに対する抗体を測定する方法
梅毒の感染時期によって検査の出方が変わりますので両方の検査をすることで感染の状況がわかります。未治療でTPHAが陽性の場合は受診が必要です。
肝炎検査
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B型肝炎検査HBs抗原:陽性の場合、現在B型肝炎ウイルスに感染している可能性があります。
専門医に相談することをお勧めします。
HBs抗体:陽性の場合、B型肝炎に過去に感染し治癒したか、あるいはB型肝炎ワクチンを接種し現在も免疫がある状態です。 -
C型肝炎検査HCV抗体:C型肝炎ウイルスに現在感染しているか、または治療し治癒した場合の両方の可能性があります。未治療であれば診断のため専門医に相談することをお勧めします。
腫瘍マーカー
腫瘍マーカーには数多くの種類が存在しますが、喫煙や炎症などがん以外の疾患でも上昇しますので、通常、ほかの検査と組み合わせて補助的に使用されます。
腫瘍マーカーだけでがんかどうかを判断することは困難です。異常値が見られた場合は精密検査が必要です。
ここでは健康診断のオプションとしてよく用いられるものを記載します。
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検査項目結果の見方
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CEA消化器系のがん(胃がん、大腸がんなど)や乳がん、肺がんなどで上昇
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AFP主に肝臓がんなどで上昇
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CA19-9主に消化器系のがん(膵臓がん、胆のう・胆管がんなど)で上昇
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PSA前立腺がんや前立腺肥大でも上昇
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CA125卵巣・子宮のがんで上昇